sweet wolf






その夜のこと……。






疲れきったあたしは、真新しい家のソファーの上でぐったりとしていた。

お父さんはまだ仕事から帰っていなく、お母さんは最新のシステムキッチンと格闘していた。

そして……





「杏奈、そんなところでゴロゴロしないの」




香水の香りを漂わせたお姉ちゃんが登場する。

だが、きついのは香水と化粧だけで、着ているものは古びたジャージだ。

おまけに、前髪をちょんまげみたいに上げている。

外行きのお姉ちゃんとは似ても似つかない格好だ。





「読モがこの格好かよ」




鼻で笑うと、




「あんたに言われたくないよ」




ズバリ、正論を言われた。




それもそのはず。

あたしもお姉ちゃんと同じようなジャージにちょんまげ姿。

だけどこれが落ち着くのだ。


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