☆マリッジ☆リングス☆
「聡く~ん」

そう言って、大きく手を振っているのは芽衣。

「おい。止めろよ。こんな人混みで・・・」

「だってーーー。」

「芽衣。お待たせ。」

秋も深まり、ひと肌恋しい季節

聡と芽衣は表参道をこうして腕を組んで歩いていた。

「今晩は何時帰り?終電?」

定時に上がってから2人は逢瀬を繰り返す。

こんな都心に、さゆりは来ない

まして子連れなんて無理だ。

聡は堂々と芽衣と夜のデートを楽しんだ。

「これ。可愛い~」

デートの主導権は芽衣。

聡の腕をグイグイひっぱって

お気に入りの店に入っては

子犬のようにキャンキャンはしゃぐ。

「これもいい~」

「あっ・・・これも・・・」

もうすぐ20代も終わるっていうのに

この女はまだ少女のように・・・

「これ。似合うよ。」

聡は小さなハートのネックレスを芽衣の胸元にあてた。

「高田ジュエリーショップ」

聡はここに来る用事があった。

「なぁ・・・芽衣、俺たち・・・」

ジュエリーショップに入ると

男女はなんとなく恋人か

結婚相手か

授業員もそう接してくるから

男はなんだか恥ずかしい。

「ちょっと、見てていい?」

「あぁ・・・」

芽衣は店内の奥に消えた。

「あのーー・・・」

聡は馴染みの店員を見つけた。

「あら。」

「あっどうも」

この女店員とはさゆりと結婚の時もお世話になっていた。

「指輪・・・オーダーしたんですけど・・・」

「あら、奥様に?」

「はい・・・もうすぐ結婚記念日なんで・・・」

「早いですね、本当に・・・」

「サイズ、これで変わってないみたいです。」

聡は、指輪を出した。

「あいつ・・・なんで気が付かないんだよ。」

台所に何日も置かれたままの結婚指輪

聡は偶然それを見つけて思いついた

「今年は、結婚指輪。またあげようと思って・・・」

「まぁ・・・それは素敵」

女店員は早速、オーダーシートを書き始めた。

「あのーー。」

「あと、同じものをもう一つ。」

「はい?・・・」

女はビックリしていたが・・・

ケースの向こう側でキャンキャンはしゃぐ芽衣を見ると

「あの御嬢さんにも?ってことですか・・・?」

「えぇ・・・まぁ・・・」

「あら・・・そう。」

女はオーダーシートに

リング2つ分注文を書いた。

「11月中旬には仕上がりますから」

「よろしくお願いします」

聡はそのオーダーシートを上着のポケットに入れて

芽衣の元へ行った。

「おまたせ」

「何?何の用事?」

芽衣はあっけらかんとしていて

また腕を組み、店を後にした。

「どこ行こうか・・・」

「うーーん・・・」

「一緒にいたい?」

「うん」

渋谷までフラフラと歩きだして

夜のホテル街に消えていった。

聡と芽衣も

付き合いだしてもうすぐ2年

若いさゆりにとって

20代最後の年を迎えていた。
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