☆マリッジ☆リングス☆
「いらっしゃいませ。」

久々に訪れた懐かしい店

「佐野さんいらっしゃいますか・・・?」

さゆりは、店員の佐野とは婚約指輪以来の再会となった。

「佐野さん・・・お久しぶりです。」

「あら・・・お元気でしたか?」

「覚えてくださってたんですね。嬉しい。」

「もちろん。指輪。あれからどうですか・・・?」

さゆりは台所にあった結婚指輪をまた付けて、佐野に見せた。

「あのーー・・・主人・・・来てませんでしたか?」

「あぁ・・・奥様の指輪。持っていらして。」

「そうですか・・・。全然気づかなかったんですよ。そんな話聞いてないし。」

「あら・・・」佐野は何か言いたげだったが、さゆりに合わせた。

「でも、何かあったんですか?おひとりでいらっしゃるなんて・・・」

「えぇ・・・まぁ・・・」さゆりはまた何とも言えない怒りのような感情がこみ上げてきて・・・

「注文のところに

指輪2つ分って・・・主人は2つ指輪を注文したんでしょうか・・・?」

「あら・・・そうだったかしら・・・」

佐野は聡ともう一人の女性のことは話せなかった。

でも、女というのは、直感ってのがある。

佐野は40代後半のベテラン店員だったが

その表情は

「いかにも・・・ご主人浮気してますよ。」ってさゆりに訴えているような・・・

さゆりは佐野のちょっとしたしぐさも見逃さない。

でも、なにか佐野が隠していることは

なんとなく感じていた。

「もしかして・・・」そんな確信。

「じゃぁ・・・せっかくだから、磨きますよ。」佐野はそういうと

ジュエリークリーニングを始めた。

店内を見て歩くさゆり。

夫はここを確かに訪れていた。

そこには、なんの痕跡などないが、

なんか感じる・・・

この違和感はたまらなかった。

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