☆マリッジ☆リングス☆
「コースで頼んであるから今晩はゆっくり食べて。」

イタリアンのコース料理なんて、半年ぶりくらい。

まして、夕食を外でゆっくりなんて、出産以来のことで・・・

「ありがとう。あなた」さゆりは胸が高まる。

食前のシャンパンで乾杯すると、

聡は結婚記念日のお祝いを切出した。

「さゆり。結婚10周年。本当にありがとう」

「いや・・・こちらこそ。」

「これは俺からのプレゼント」

差し出したのは、シルバーの結婚指輪。

「ダイヤをね。新たに付け足したんだ。デザインは、ほぼ一緒で。」

ほんの少しだけグレードアップしたその指輪は

さゆりをまた新婚時代に呼び戻す。

「うわーーー。綺麗。」さゆりはその指輪をはめてみた。

「サイズピッタリだよ。」

「当たり前だろ。おまえ・・・台所に指輪置きっぱなしで・・・」

「そうそう・・・2日くらい、ザラだもんね。」

「今日から、大事にしろよ。」

料理に舌鼓しながら、さゆりは何回もその指輪を見直した。

「それと・・・

ここからが大事なんだけど・・・」

聡は、メイン料理が運ばれるちょっと前にそれを切り出した。

「俺・・・好きな人がいるんだ。」

「え?」

「だから・・・今、付き合っている恋人がいるんだ・・・」

さゆりは、天国から地獄に落とされたかのような、驚きで・・・

「何よ、それ・・・」

メインの肉料理もどんどん冷めていく・・・

「何よ・・・それ・・・」

そこから先がなかなか出てこない

本当に怒りで体が支配されると

何も出てこない・・・

ただただ、聡の顔を見入る、さゆりだった。

「離婚してくれ・・・」

聡は、この記念日に「離婚」を決めていた。

「なんでよ・・・」

さゆりはこれ以上聞きたくなかったのか

店を後にした。
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