二重人格三重唱
 「ねえ陽子。コーン何とかと言う化粧品知らない?」


「ああ、コンシーラー? シミやソバカス何かを隠す物よ。それが何か?」


「やっぱり……」


翼は泣いた。
声が枯れるほど泣いた。


翼は泣きながら、翔に言われた双子の真実を陽子に語り出した。


自分の本当の母親は薫で、香が薫になりすましていると翼は考えた。


「母さんは一体何処にるんだはろう? きっともう生きてはいない」
言ってから怖くなった。

一体誰が母を殺したのか?

父か?

母か?

その時初めて翼は両親に強い殺意を抱いた。


自分が産まれて十八年。

そっくりそのままが本当の母の行方不明歴の筈。
だとしたら父の所持している土地の何処かに埋められてはいるはずだ。


それが何処なのか翼に解る訳がない。
真実を知るために……。
翼は今やれることを遣るしかなかった。


翼は受験勉強に益々没頭した。

ともすれば両親への憎しみに負けて、気が狂いそうになる。

そんな妄想からも逃れるために。

受験勉強をしっかりこなし、自分の存在価値をアピールするしかなかった。


もし自分の考えが正解だとしても、とっくに時効だ。


殺人時効が十五年から二十五年になっても……廃止されようとも……。

傷害致死だったら、それ以前に成立してしまっている。
翼は改めて、十八年と言う歳月の重みを感じていた。


(あ、そうか時効か……)


翼は思い出していた。薫のヘアースタイルが急に変わった頃のかとを。


バッチリメイクからナチュラルメイクに変えた頃……

それはその頃時効を迎えていたからでらないのだろうか?


つまり、自分を産んですぐに殺された。

あの柿の実事件の前、確か十歳の時だった。


例えバレても……

時効は成立していたのだ。


ただ……
実父に会いに行く時だけは別だった。
その時だけは、何故だかバッチリメイクだったと記憶していた翼だった。




< 104 / 147 >

この作品をシェア

pagetop