二重人格三重唱
 その事件は、摩耶がにアリバイを証明したために両親も知ることとなった。

大反対され、別れることを余儀なくされた摩耶。

でもその時、摩耶は妊娠していたのだった。


摩耶は東大の合格発表の会場で偶々翔の近くにいたのだった。
翔は翼同様、端正な顔立ちをしていた。


陽子が翼に惚れたように、摩耶も翔に惹かれたのだった。




 両親が、日高家には莫大な財産があると知ったのはその直後だった。


両親は娘のためだと割り切って、摩耶を嫁がせることに決めた。


結婚式は摩耶の希望で六月に挙げることとなった。




 陽子は大分落ち着きを取り戻していた。

母の節子が陽子の体調を心配して様子を見に来てくれた。


「容疑が晴れて良かったね」
節子の声が優しく響く。

陽子は思わず節子の胸で泣いていた。


「怖かった。翼が連れて行かれそうで」
陽子は母の抱かれて、久しぶりに甘えた。


「陽子の甘えん坊」
節子は笑いながら陽子を受け止めていた。


庭にシロツメクサが咲いていた。


「私は昔……ううん今でも四つ葉のクローバー探しの名人なのよね」
節子はそう言うと、すぐにそれを探し始めた。


「ほら、見つかった!」
節子は手招きをして、陽子を呼びつけた。


「あー、本当だ!」
陽子は嬉しそうに声を張り上げた。

陽子はその幸せの象徴を愛しそうに見つめていた。




< 114 / 147 >

この作品をシェア

pagetop