二重人格三重唱
翼はその頃、日高家にいた。
「お前が殺ったのか?」
単刀直入に翔が聞く。
「違うよ。僕には確かなアリバイがある」
「陽子さんの実家で宴会か? 怪しいもんだ」
翔はサバイバルナイフをテーブルの上に置いた。
翼はそれを見て驚いた。
あのオルゴールの底に貼り付けられていたナイフと同型だった。
「驚いたか? 同じのを又買ったんだ。あのナイフを買ったことは誰にも内緒にしていたんだよ。それが殺害現場にあったと言うことは、犯人はお前だと言う証拠だよ。オルゴールの下のナイフを見たのはお前だけだから」
「そうだな。お前の部屋にあのナイフがあったのを知っているのは確かに僕だけだね」
「俺への祓いせか!」
翔はナイフを構えた。
「殺す気か。一人じゃ何にも出来ないくせに!」
「何っ!?」
翔はいきり立った。
「そうだろう。警察で聞かれて分かった事がある。親父は睡眠薬強姦事件の斉、証拠隠滅のために何事も無かったように細工をすると。でもあの日陽子は下着が一枚外されていた。後で家に入ったお前がしたんだろう?」
翼はテーブルを叩いた。
「ああそうだよ。お前に気付いてもらわなきゃ意味がない」
「僕に親父を殺させるためにか!?」
「遂に認めたな……」
翔は頷きながら薄ら笑いを浮かべた。
「その先は容易に想像出来る。お前きっと逆上して、親父の足跡を消そうと陽子さんの体を洗った。その後……」
「止めろー〜!」
翼が激しくテーブルを叩いた。
「図星か!?」
翔は勝ち誇ったように笑った。
「どうせ、自分の愛で清めるとかなんとか言いながらやったんだろ? よくやれるな、あの親父の後で」
その言葉は翼の心に深く突き刺さった。
翼は逆上して、翔からナイフを奪い身構えた。
「お前が悪いんだ」
逃げながら翔が言う。
「お袋まで殺すからだ!」
翔は泣いていた。
「俺は知ってるんだ。お前が本当はお袋が大好きだったって。だから勉強していたってことも。それなのにどうして殺したんだ」
翔は逃げ切れないと悟ったのか、両手を広げて翼を待った。
「いや違う。お前は本当は母さんまで殺して欲しかったはずだ。そうでなきゃ、彼処にナイフは置かない」
翼はサバイバルナイフを構えながら、徐々に翔との距離を縮めていった。
翔が母親の遺体を見た時、殺す手間が省けたと喜んだのは事実だった。
翼と翼の母である薫を憎む余り、翔を溺愛した香。
嬉しい反面憎んだ。
産まれて来ない方が良かったと思ったこともあった。
それでも母だった。
翔にとっては愛する母だったのだ。
その日、翼は帰って来なかった。
陽子は翼が日高家に行った事実をまだ知らずにいた。
「お前が殺ったのか?」
単刀直入に翔が聞く。
「違うよ。僕には確かなアリバイがある」
「陽子さんの実家で宴会か? 怪しいもんだ」
翔はサバイバルナイフをテーブルの上に置いた。
翼はそれを見て驚いた。
あのオルゴールの底に貼り付けられていたナイフと同型だった。
「驚いたか? 同じのを又買ったんだ。あのナイフを買ったことは誰にも内緒にしていたんだよ。それが殺害現場にあったと言うことは、犯人はお前だと言う証拠だよ。オルゴールの下のナイフを見たのはお前だけだから」
「そうだな。お前の部屋にあのナイフがあったのを知っているのは確かに僕だけだね」
「俺への祓いせか!」
翔はナイフを構えた。
「殺す気か。一人じゃ何にも出来ないくせに!」
「何っ!?」
翔はいきり立った。
「そうだろう。警察で聞かれて分かった事がある。親父は睡眠薬強姦事件の斉、証拠隠滅のために何事も無かったように細工をすると。でもあの日陽子は下着が一枚外されていた。後で家に入ったお前がしたんだろう?」
翼はテーブルを叩いた。
「ああそうだよ。お前に気付いてもらわなきゃ意味がない」
「僕に親父を殺させるためにか!?」
「遂に認めたな……」
翔は頷きながら薄ら笑いを浮かべた。
「その先は容易に想像出来る。お前きっと逆上して、親父の足跡を消そうと陽子さんの体を洗った。その後……」
「止めろー〜!」
翼が激しくテーブルを叩いた。
「図星か!?」
翔は勝ち誇ったように笑った。
「どうせ、自分の愛で清めるとかなんとか言いながらやったんだろ? よくやれるな、あの親父の後で」
その言葉は翼の心に深く突き刺さった。
翼は逆上して、翔からナイフを奪い身構えた。
「お前が悪いんだ」
逃げながら翔が言う。
「お袋まで殺すからだ!」
翔は泣いていた。
「俺は知ってるんだ。お前が本当はお袋が大好きだったって。だから勉強していたってことも。それなのにどうして殺したんだ」
翔は逃げ切れないと悟ったのか、両手を広げて翼を待った。
「いや違う。お前は本当は母さんまで殺して欲しかったはずだ。そうでなきゃ、彼処にナイフは置かない」
翼はサバイバルナイフを構えながら、徐々に翔との距離を縮めていった。
翔が母親の遺体を見た時、殺す手間が省けたと喜んだのは事実だった。
翼と翼の母である薫を憎む余り、翔を溺愛した香。
嬉しい反面憎んだ。
産まれて来ない方が良かったと思ったこともあった。
それでも母だった。
翔にとっては愛する母だったのだ。
その日、翼は帰って来なかった。
陽子は翼が日高家に行った事実をまだ知らずにいた。