二重人格三重唱
翔の体でも良かった。
翼の魂で帰ってほしかったのだ。
優しかった翼。
きっと自分の為に戻って来てくれる。
陽子はずっと、そう思いながら翼を待ち続けていたのだった。
「俺、翔。ちょっと出られないか?」
でも……。
翔はそう言う。
「うん分かった。ちょっと待っててね」
陽子は少しがっかりしながら、バッグから鍵を出し外に出る。
「何処へ行くの?」
「中川」
そっけなく言う翔。
「私の実家?」
翔が頷く。
陽子は鍵を閉めながら、実家に行く旨のメモを郵便受けに入れた。
「これから中川で犯人捜しだ」
秩父駅に向かうバスを待ちながら翔が言う。
「そう言うことは、私達が犯人だと思っている?」
翔は頷いた。
バスの車内で陽子は、翔の中の翼を見つめた。
翔は、そんな陽子を無視して摩耶の花嫁姿の写真を見ていた。
翔の住む家からは御花畑駅の方が近かった。
でもバスはそこにはもう通ってない。
勝の話では、昔は坂氷バス停の先を市役所方面に直進していたそうだ。
お花畑駅横を通り、メインストリート・秩父神社を抜けて秩父駅までコの字を描くように行っていたと言うことだった。
でも今は交通事情等もあり通らなくなったらしい。
坂氷バス停先を右斜めに曲がる。
そのずっと先に踏み切りがある。
其処を渡とその先の信号を右に折れる。
何時か翼と行った、秩父神社の横を曲がりバスは秩父駅に向かった。
駅前はロータリーになっていて、地場産の前にバス停があった。
《降りる》ボタンを翔が押しす。
バスは静かに秩父駅前の停留所に到着した。
ドアが開き、翔は陽子の後に付いた。
逃げられなくするためらしかった。
秩父駅でバスを降りた翔は、その足で自動券売機に向かった。
そんな時でも陽子と離れない。
陽子は既に諦めていた。
翔と、翔の中で眠る筈の翼の魂と向かい合う。
そのために……
必死に恐怖に打ち勝とうとしていた。
秩父駅の周りでは何時か翼と乗ったSLが到着するのを待ち構えて、カメラを用意している人もいた。
その到着の大分前に出る電車。
二人はそれに乗った。
翼の魂で帰ってほしかったのだ。
優しかった翼。
きっと自分の為に戻って来てくれる。
陽子はずっと、そう思いながら翼を待ち続けていたのだった。
「俺、翔。ちょっと出られないか?」
でも……。
翔はそう言う。
「うん分かった。ちょっと待っててね」
陽子は少しがっかりしながら、バッグから鍵を出し外に出る。
「何処へ行くの?」
「中川」
そっけなく言う翔。
「私の実家?」
翔が頷く。
陽子は鍵を閉めながら、実家に行く旨のメモを郵便受けに入れた。
「これから中川で犯人捜しだ」
秩父駅に向かうバスを待ちながら翔が言う。
「そう言うことは、私達が犯人だと思っている?」
翔は頷いた。
バスの車内で陽子は、翔の中の翼を見つめた。
翔は、そんな陽子を無視して摩耶の花嫁姿の写真を見ていた。
翔の住む家からは御花畑駅の方が近かった。
でもバスはそこにはもう通ってない。
勝の話では、昔は坂氷バス停の先を市役所方面に直進していたそうだ。
お花畑駅横を通り、メインストリート・秩父神社を抜けて秩父駅までコの字を描くように行っていたと言うことだった。
でも今は交通事情等もあり通らなくなったらしい。
坂氷バス停先を右斜めに曲がる。
そのずっと先に踏み切りがある。
其処を渡とその先の信号を右に折れる。
何時か翼と行った、秩父神社の横を曲がりバスは秩父駅に向かった。
駅前はロータリーになっていて、地場産の前にバス停があった。
《降りる》ボタンを翔が押しす。
バスは静かに秩父駅前の停留所に到着した。
ドアが開き、翔は陽子の後に付いた。
逃げられなくするためらしかった。
秩父駅でバスを降りた翔は、その足で自動券売機に向かった。
そんな時でも陽子と離れない。
陽子は既に諦めていた。
翔と、翔の中で眠る筈の翼の魂と向かい合う。
そのために……
必死に恐怖に打ち勝とうとしていた。
秩父駅の周りでは何時か翼と乗ったSLが到着するのを待ち構えて、カメラを用意している人もいた。
その到着の大分前に出る電車。
二人はそれに乗った。