二重人格三重唱
 陽子も又、翼と共に過ごしたかった。

クリスマスイブだから余計に傍を離れたくなかったのだ。


節子はそんな陽子の思いを察し、反対もしなかった。
実は、それが少し不安だった。


(信頼されているから)

そう思う。
でも、それが重い。

本気で、翼を婿にしようと考えいる節子。

双子だから、一人位……

陽子は節子のそんな思いに押し潰されそうになっていた。


そんな時に勝から持ち掛けられたら作戦。

翼を喜ばせようと、その話に乗った陽子。

でも、看護士に見つかったら大変な騒ぎになる。

そう思い……
今がある。

陽子は薄ら寒いシャワールームで、ただ消灯時間だけを待つしかなかったのだ。




 でもその前に、この仕組まれた事件は起ころうとしていた。


翼は付き添いの場合は何時もシャワーを浴びていた。

それを陽子はまるっきり知らなかったのだ。


実は……
それこそが勝の仕掛けたサプライズだった。


勝はドキドキしながら、翼の帰りを待っていた。




 翼は勝の食事を世話をやいた後、入院患者の内比較的体の動かせる人用の食堂で食事をしていた。

売店で買うオニギリやパンだった。
でも今日はクリスマスイブなので、勝のためにこっそりケーキも用意していた。

一般的なテーブルセットでの食事。
それはリハビリにも通じるようで、皆生き生きとしていた。

翼に恋人が出来たことは周知のようで、偶にはからかわれたりした。
でもそれが嬉しくて堪らない翼だった。


病室に入り、ケーキを冷蔵庫にしまう。

翼はその後上着を脱いでハンガーに掛けた。

そして一枚一枚洋服を脱いでいったのだった。


薄目を開けて勝が見ているとも知らず、翼は奥のドアに手を掛けた。


その時を待っていたかのように、勝は微笑んだ。
でも翼は気付いていなかった。




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