シュガーメロディ~冷たいキミへ~


しばらく立ちすくんだままぐるぐると思考が回っていたけれど、午後の授業の予鈴が鳴ったことにハッとした。


早く教室に戻らなきゃ……。


水無月くんが蹴ったせいで大きく列を乱した机と椅子の向きを直して、私は自分で自分に戸惑う感覚を拭いきれないまま、空き教室を後にした。




「あ、梨音!おかえりー」


教室に戻ると、にっこりと笑顔を浮かべたこのみちゃんからプリントを手渡され、思わず首を傾げる。


何だろう、と思って手元に視線を向ければ、それはさっき水無月くんから受け取ったはずのプリントで……。



え、あれ?

そういえば、いつの間にかプリント、持ってない!


もしかしてぶつかられて水無月くんに抱きついちゃったときに手放しちゃったのかな!?

私、かなり動転してたし、プリントのことなんてすっかり頭から抜け落ちていた。


……そっか、このみちゃんが拾ってくれたんだ。


よかった。


なくした、なんてとてもじゃないけど言えないもんね。


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