シュガーメロディ~冷たいキミへ~
「ご注文が決まりましたらお呼びください」
そう言いながら、向かい合わせに座った俺と雪岡の前に、カタン、と水の入ったコップを置いて、店員は一度ペコリと頭を下げ、他のテーブルに向かっていった。
「……何頼む?」
メニューを開き、注文を済ませると、頼んだものがドリンクだけだったからかすぐに運ばれてくる。
湯気がふわふわと浮かぶティーカップにミルクを入れた雪岡の紅茶にできた、茶色と白の綺麗な渦巻きが溶けていくのをなんとなく眺めていた。
「……ずっと逃げていてごめんなさい」
スプーンでくるくると紅茶をかきまぜていた手を止めて、雪岡は視線を伏せたまま不意にそう言った。
雪岡のほうから口を開くとは思っていなくて、びっくりしてしまう。
「え、いや……。雪岡が俺を避けたくなるのは仕方ないっていうか、……謝らなきゃいけないのは俺の方だから」
そう言うと、雪岡は意外そうな顔をした。
「……聞いたんでしょ?俺がずっと雪岡に……、冷たくしてたのは、ピアノの音が俺の母親の音にそっくりだったからだって」
自分の口から「冷たくしていた」と言うのは結構勇気のいることだった。
自分勝手な理由でそうしていたから、なおさらそう感じるのかもしれない。