徹底的にクールな男達
「ちょっ……」

 炬燵が小さいせいで狭くてうまく身体が動かせない。

「ん……」

 何で急に……キス……。

 柔らかな唇は唇と重なり、堂々と舌が侵入してくる。

 その舌にどう対処すればいいのか分からず迷っているうちに、炬燵が大きく動かされ、福原は麻見の隣に入り込んでくる。一旦唇が離れたその隙に、強引に足を突っ込んでくる。

「………………」

 何と言って拒否してよいのか分からず、ただ固まっていると顎を掴まれ、再び唇が重なった。

 やはり、舌を絡ませてくる。

 抵抗のつもりでワイシャツの胸元を手で押したが、すぐに捕らわれ、指と指がするりと絡まっていく。

 キスは、深く、濃厚だ。

 それに反応してはいけないと思う。

 福原のことなんか好きじゃないと思う。

 なのに、息継ぎをする間を待たずに吐息が漏れ、自然に指に力を入れてしまう。まるで、繋がっている指に気持ちを込めるように。

 そしてそれに応えるように、相手も指に力を入れ、当然のようにゆっくりと身体を押し倒してくる。

 片時も唇を離さず。

 身体を完全に預けてしまっていたのでぼんやりしていたが、気付いた時には、頭の下にクッションがあり、ゴツゴツした大きな手が腹の上にあった。

 トレーナー越しに、ゆっくりと撫でてくる。

 だけど。その先は嫌だ。

 それは、全然違う!

 そう思って、空いた手で太い手首を掴もうとしたが、

「ぅん……」 

 諭すように、舌を奥までねじ込んで来る。指にも力が入り、再び絡まった指先がまるで恋人同士のそれのようになり、更に全身が快感に集中してしまった。

 腹の上では払い切れなかった手がゆっくりと動いている。更に、トレーナーの中に侵入しようとしている。

 頭では分かっているのに、完全に身体に火がついてしまって良い所を撫でて欲しいと背中が若干浮いてしまっていた。

 それに気づいたのかどうなのか、福原はするりと服の中に手を突っ込むと唇をようやく離し

「ブラだけ取ってみよっか」

 耳元で息を吹き込まれた。

しかも何を指しているのか、全くわけが分からず返事もできない。

 ただ、好きでもない人に裸を見せるのは嫌だから……トレーナーをたくし上げないでほしいと自分に都合の良い文句が頭を巡る。

そうこう考えている間に、背中の下ではゴツゴツした手が器用にパチンとホックを外し、

「あ゛―……とっちゃった……。服の上からでも乳首立ってるの、バレバレだよ」

「いや!!」

 全身がカッとなって、咄嗟に身体を隠そうと捩ったが、

「ダメダメぇ。見せてくんないと」

 と、上から覆いかぶさるように、両手首を掴んで見下ろされた。

「ここでしょ?」

 更に唇を服に擦りつけ、軽く刺激してくる。

そけだけでも充分すぎるくらい背中が弓になり、福原の顔に自らを擦りつけるように身体が浮いてしまう。

「直でしちゃおっか。息、はあはあ言ってるよ? もう我慢できない? まだ大丈夫?」

「…………、…………」

 何をどう言えばいいのか分からず、ただ、福原の目を見つめた。

「かわい」

 また、キスが降り注いでくる。

「あー、俺が我慢できねぇや」

 言うなり、バッとトレーナーをはぐった。恥ずかしさのあまり、手に力を入れて阻止しようとするが束の間、右手首を押さえつけられる。

「すけべ」 

 目を見てしっかり言われた。

 そんなことない!!! の一言が、口から出ない。

「あーあー、しっかり感じてんの」

 福原は乳首を口に含んで続けた。

「んー? キスが良かった? 愛が籠ってたからなあ。

腰も動いてるし……もう余裕ない?」

  言いながら、自らを擦り付けてくる。形が分かるほどになったそれを、今の麻見ではどうすることもできない。

「どうせ下もびっちょびちょだろ? ……どしたの? 黙って」

 だとしても、福原のことは好きではない。

 身体は確かに気持ちいいけど、福原のことが好きで反応しているわけではない!

 その想いが通じるはずもなく、福原は見たこともないような、嬉しそうな表情で見下し、

「黙ってるってことは……」

 一度離した腰を、強く打ちつけて耳元で低く囁いた。

「入れてってことだろ?」

 そうじゃない!!

 しかしその一言は口から出ず、ただ福原の言うがままになってしまう。

「言わせちゃうよ? おっきい声で。『いかせて下さい』って言わせちゃうよ?」

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