蒸発島

「風子、怖くはないのか?」
 ここまで強引だった二藍が、遠慮がちに言った。
「怖いって?」
「これから死人に会うんだぞ。……本当にいいのか?」

 私は、二藍がもう死んでしまっていると思っていた。それが事実かどうかはまだ分からないけれど、二藍といるうちに、死人に対する恐怖心が消えていた。
 死人が怖いというのは、映画や漫画のように「怖くする」ことを意識した表現の植え込みで……、私は霊感が無く、見たこともない霊を怖いと思うのはやはり人間による勝手な想像でしかないのではないかと――、
(つまりは、二藍を見る限りではそういった怖さは一切感じない……)
 その気持ちに嘘はない。私は二藍をもっと知りたいと思っている。もっと――近づきたい。

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