蒸発島
「瑠璃は哀しそうだ」
「気のせいだろ」
「いや、……全てを諦めているような、そんな顔しかしない」
瑠璃は遠くを見つめた。私を見ていながら、私でないどこかを見ている。
「瑠璃は、ここに居る。ずっと昔から――」
「そうだよ? ここに居る」
彼女の瞳は変わらない。彼女はいつも、何を考えているのだろうか――?
「僕には、知りたい現実なんてないんだ。存在しない。意味も、理屈も、目に見えるものは全て僕にとっては必要の無いことなんだ」
「今、私と話していることも必要ないって言うのか?」
少し腹が立って言い返した。しかしそれは無意味だとすぐに分かった。
彼女と私の差は、永遠に埋まらない。出会ったその日から、そう思っていたのだ。いくら何年も一緒に居たからと言って……、
(今更過ぎたな、今の言葉は……)
「すまない、瑠璃。今のは忘れてくれ」
「ふうん」
瑠璃はにやりと笑った。
「……なんだ?」
「君はまだ若いのに、大人なんだね」
「……馬鹿にしないでくれ」