世界で一番、ずるい恋。
迷 子 *Lost child*





あれから季節は巡って、桜の蕾が姿を見せはじめた。

といっても咲くにはまだかかるらしい。


学校は自由登校になってほとんど来ることは無くなっていたけど、今日は卒業式の練習があった。


明日、私は高校を卒業するーー。




「おう、阿波」



ホームルームが終わって、私が向かったのは数学準備室。

ドアを開けると、先生が笑顔で私を迎えた。




「先生、この部屋で窓から景色見る以外することないわけ?」




隣に立って私も同じように外を見る。

だけど自分でも無意識のうちに、図書室を見ることを避けていた。



あの日から律とは必要最低限の会話以外しなくなった。

そして、その代わりに私は頻繁に数学準備室へ足を運ぶようになった。




「何だよそれ。常に俺が仕事サボってぼーっとしてるみたいな言い方するなよなー」




ここで先生と一緒にいても、もう罪悪感を感じることは少なくなっていた。





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