世界で一番、ずるい恋。




……やだな。

たったそれだけのことで、酷く臆病になる。




片想いなんて臆病になって遠慮したって叶わないって、分かってる。

しかもそれが先生となったら、尚更。



なのに、積極的になれない。

我が儘になれない。


素直な気持ちを真っ直ぐぶつけられない。

常に私は、困ったときのために無意識に逃げ道を作ってるんだ。


嫌われたくない。

面倒だって思われたくない。


例えダメだとしても、他の生徒たちと変わらないポジションを保っていたい。




「あ、火曜で大丈夫ーー」

「分かった、月曜の放課後な」





また逃げ道へと走ろうとした私の声を遮って、そう口にした先生はさっきの表情が嘘なんじゃないかって思うほど爽やかな笑みを浮かべている。



何か用事があるから、あんな顔をしたんじゃないのかな?


でも、先生が良いって言ってるんだから大丈夫なのかな?



ここで私が変に遠慮して断る方が変だよね。

……それに、頑張るって決めたから。





「はい、宜しくお願いします」





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