世界で一番、ずるい恋。



じっと注がれる視線に、文字を書く腕が微かに震える。

ものすごく緊張して心臓に悪い。


私が迷うと視界の端から先生の指が飛び込んできて、どの公式を使うか教えてくれる。

先生の前で間違えたくなんてないのに、いつも以上に頭が働かない。



いくら夏が近付いているからって今日は特に暑いわけじゃない。それなのに緊張からか、じわりと額に汗が滲む。

……先生が近くにいるだけで、ドキドキして仕方がない。



手を伸ばせば届きそうな距離にいるこの瞬間が嬉しい、幸せ。

だけどその手を伸ばすことは許されないって知ってるから、苦しくて、切ないの。


先生にとって良い子でいたいわけじゃないの。

だってそれじゃ、恋愛対象外でしょ?

" 良い女 " じゃなきゃ意味がない。


だけどそんなの程遠いし、第一今の私は良い子ですらない。

勉強を教えてもらうっていう、貴方が先生、私は生徒っていう立場を利用して一緒にいるんだもん。






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