かたつむりの恋
おせぇよな、こいつ。
よし、適当な葉っぱに
乗っけてやるかーーー


鈴木はカタツムリを
掴もうとして、
その手を止めた。


どうしたの?


ん、やっぱ止めとくわ。


なんで?
かわいそうじゃん、
中々、進めないし。


今度は私がカタツムリに
手を伸ばした。


止めとこうぜーーー


そう言って、
鈴木は私の手を掴んだ。








っ………………////////////。








手、手、手、……







やっぱ赤い傘で良かった。
傘の赤色が反射して、
きっと私の顔、真っ赤なんだよ。
そう、傘の赤が反射してるから
顔が赤いんだよ。
水溜まりでも分かるくらい、
水面に映る赤い顔を
見ながらそう思った。


ほっぺが異常に熱いのは
どうしてだか、
分からないけど……。









そのさ、
ゆっくりでいいかなって。


鈴木がまた話始めた。


なんで、嫌なんだろって、
いい人で優しい人なのに、
お父さんになるのは
なんで、嫌なんだろって。
どうしたら、
普通に出来るんだろって……。


だけどさ、
なんか、もういいやって、
カタツムリ見てて思った。
慌てなくて、ゆっくりで
いいやって。


上手く説明できねぇけど、
直ぐに答え出さなくても
いいかなって。
無理に出さずにさ、
ゆっくりでもいいから、
自分で納得のいく、
答え見つけようかなって。


きっと、
その方が良いような
気がするんだ。
多分……、いや、


きっと、
きっとな!


そう言って、
鈴木が傘から覗いて、
私に笑いかけたとき、
一瞬、世界が止まって見えた。


しとしと降っている雨も
ノロノロでも進んでいた、
カタツムリも……。


全てが止まって、
ただ、鈴木だけが
動いていた。


鈴木の笑顔だけが唯一、
動いていたんだ。






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