不純に愛して 素直に抱かれて
Side women
「最近、あまり会ってくれませんね」
「そんな事ないよ」
「うそ。都築さん私に会うの避けてる」
そこまで私に言わせても彼はあくまでしらをきる。
「考えすぎだって果乃子」
けれど言葉とは裏腹に表情には滲んでいる。「察してくれ」と。
ズルイ。ズルイ。ズルイ。
最後まで私ばかり苦しくて。最後まで私に『賢い女』でいる事を強要する。
「都築さんズルイ…」
夜しか会えない事も。まともなデートも出来ない事も。誰にも言えない事も。休日は独りぼっちな事も。なんの約束もして貰えない事も。みんなみんな我慢してきたのは、貴方の為なのに。
なのに最後まで貴方は。
『別れたくない』
そんな一言さえ私に言わせてくれないなんて。
「果乃子はあまり俺に拘らない方がいいよ、まだ若いんだから。もっと視野を広げなさい」
私を心配するふりをして
「俺は果乃子が心配なんだよ。果乃子はもっと俺と過ごす以外の時間を持った方がいい」
自分が傷付かない言葉を選んでる。
「ズルイ、都築さん。ズルイ、ズルイ…」
さめざめと泣く私の頭を抱き寄せて撫でるその手はこの期に及んでも暖かくて。
―――本当に、ズルイ。
その刹那のぬくもりにさえ私は縋りたくて、貴方を責める事さえ出来やしない。