それでも、課長が好きなんです!
 会社へ着くと真っ先にパソコンを立ち上げる。
 立ち上げると出勤ボタンが画面に映し出され、それをクリックすると出勤のチェックになる。
 忘れることはまずないと思う。
 そして次にメールのチェック。
 ほとんどが各部署から届く業務連絡や仕事の成果や進捗状況についての報告だった。
 なになに?
 総務からの連絡で今月は経費削減強化月間とある。
 過去の強化月間中、コピー機の使用量が多かったときにその状況を調べ上げられ、
 出来るだけカラーは使うなだとかミスプリントが多いと小言を言われたりしたんだよなぁ……気をつけなきゃ。

「瀬尾さん、おはよう」
「あ、寺島さん、おはようございます」

 声と同時に隣に立った影を見上げた。
 二年先輩の寺島さんは入社当時からずっとお世話になっている頭が上がらない先輩だ。
 仕事をしているときは眼鏡をかけピリっとして緊張感のある雰囲気だが、一歩外へ出ると気さくな優しい人。
 プライベートでも一緒に飲みに行ったりと親交がある。

「朝一から非常に言いにくい残念なお知らせなんだけど……」
「なんですか?」
「穂積さんが恐ろしい形相で瀬尾さんのこと呼んでるけど」
「……」

 助けを求めすがるような目でじっと無言で寺島さんを見つめていると彼女ははぁと小さく溜息を吐いた。

「もぅ、今度は何したのよ」
「いえ特に、心あたりは……」
「とにかく、早く行って。打ち合わせがあるらしくて面談室にいるから。打ち合わせがはじまる前に行かないともっと怒られるよ」
「はーい……」

 寺島さんに急かされ重い足取りで面談室へ向かった。
 フロア内に設置された小部屋で、主に上司との面談や部署内での簡単な打ち合わせの場に使われる部屋だ。
 部屋の扉を前にひと息つき、ノックをしてから中へと入った。
 入って真正面に穂積さんの気配を感じてその圧迫感に思わず俯いた。
 「おはようございます」と挨拶するが無視をされ「いいからこちらへ来い」とトーンの低い声にビクリと肩を震わし、言われた通りまっすぐへ部屋の中へと足を進めた。

< 3 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop