【完】君ノート
ピアノを弾き終えた花音は、柔らかに笑う。
君の笑顔が見れてよかった。
もう、俺のせいで泣かないで。
「花音のピアノ、やっぱ好きだわ。
最後に聞けて、本当に良かった」
俺の言葉に、花音は目を見開いて驚いている。
……もう、君を泣かせない。
君の笑顔が見れるなら、もう俺は君の前からいなくなる。
ここにはもう、二度と来ない。
「今まで、ありがとな」
無邪気に、ニカッと笑って見せた。
そして俺は、振り返り、教室をでようとする。
ガタッと、花音が椅子から立ち上がる音がした。
俺は振り返って、君を見つめる。
最後くらい、俺らしく伝えよう。
今日が終わり、明日へ向かう前に。
「明日の体育祭、頑張れよっ!!」
──君が、好き。
伝えたい言葉は違ったけど、明日へと繋げるには、これがいいんじゃないかな。
俺らしく、
大きく手を振って、その空き教室をあとにした。