【完】君ノート
「……お父さん、顔をあげて?」
ゆっくりと顔をあげ、悲しげな表情を見せるお父さん。
「お父さんの方が、ずっと1人で苦しかったんだね?
……ごめんね?気づいてあげられなくて」
「……違う。俺が悪いんだ……。俺がっ」
「お父さんは悪くないよ。
家族を守るためだったなんて……私、知らなかった」
「でも!俺のせいで、花音は声を失った!」
お父さんは苦しそうに、そう言う。
まるで全ての罪を、背負ってるかのように。
「ううん、違うよ。お父さん。
私は確かに、声を失ってすごく辛かったよ。
もうこのまま、声なんてなくなって…人と関わらないようにしようって…思った。
でも……ある人のおかげで、私は声を取り戻したいって思ったの……」
優くん……。
優くんが、このノートをくれたから。
私は、変わりたいと思ったんだ。