【完】君ノート
〜♪〜♪〜♪
花音の声に、俺の声がハモるのはもったいない。
花音の音を悪くする気がする。
そう思ったけど……。
幸せそうに歌う花音の横顔に見惚れながら、
花音と音を重ねられることが嬉しくて…。
やめることはできなかった。
伴奏の途中。
「あははっ。
優くん、ちょっとだけ音痴なの?」
花音に笑ながら言われた。
「悪かったな。音痴で」
だから、ふてくされたように返した。
そう、俺は歌が下手なんだよ。
だから聞かれたくなかった。
「……ううん。
でも、すごく楽しい。歌ってすごいよね。
一緒に歌うだけで、みんな笑顔になる」
そう言っている花音が、笑顔だった。
俺はその笑顔を見て、頬が緩んでしまう。
そうだな。
みんな、笑顔になるな。
ほら。
君が歌えば、心から楽しくなる。
すごいんだ。
声の力って。