【完】君ノート
「それは褒めすぎだよ」
照れくさそうに笑うけど、全然褒めすぎなんかじゃない。
高くて、透き通って……キレイな声。
「歌、うまいんだな」
「あははっ。
昔はすごく音痴だったんだよ?
でも、上手になりたくて、いっぱい練習した」
「へぇー。意外」
そう言うと、花音は無邪気に笑った。
「ねぇ、優くんも歌って?」
「はっ?」
花音の言葉に、変な声がでてしまった。
「私、優くんの声好きだよ。
だから、歌ってほしいな」
そして花音は、ピアノで誰でも知ってる曲の前奏を弾いた。
「ねっ!歌って?」
「いや、俺はいいって!」
俺は歌が苦手だ。
音楽の授業でも、あんまり歌でいい成績をとったことがない。
「じゃあ、一緒に歌おう?」
でも、花音の強引さに俺は歌わされることになった。