【完】君ノート




「もう二度と、花音に声は戻らない。
あの子は、全てに絶望してるんだ……」





お父さんの弱々しい言葉に、俺はイラつきを覚えた。



───ガタッ。



「あんたがそんなんで、どうすんだよ!!!」



椅子から立ち上がると大きな声で叫んでいた。

ポカンとしてるお父さんに、俺はそのまま続けて言った。





「あんたは花音のお父さんだろ?
花音の……残されたたった一人の家族なんだよっ。

なんで……。なんで花音を信じないんですか?


花音を信じてください!
あなたの娘は、そんな簡単に諦めるような人じゃい!!」




俺の叫び声に、花音のお父さんは呆然としていた。


そして、ハッとしたように言う。




「……そうか。
ははっ。そうだったね……。

なにをしてるんだろうな。俺は……。
花音を信じないといけないのは俺なのに。

奏と俺の……自慢の娘なのに……」




そう言って、花音のお父さんはポロポロと涙を流し始めた。





「今まで俺は、花音になにもしてやれなかった…。今までの距離が怖かった。

でもそんなの関係なく、花音は俺の家族だ……。
俺が支えなきゃいけないのに……」




うなだれるように、お父さんは泣いている。





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