助手席にピアス

「でも私……こんな格好なのに」

私はガトー・桜の手伝いに来る時は、動きやすいようにパンツスタイルと決めている。シックな姿の桜田さんと、自分の格好はどう見ても不釣り合いだ。

「安心しろ。俺がお前に魔法をかけてやる」

「魔法?」

「ああ。……なんだか自分で言っておきながら恥ずかしくなってきた。ほら、行くぞ」

「あ、はい」

桜田さんが車のキーを手にすると、出発のサイン。

照れ隠しのためなのかコホンと小さく咳払いをする桜田さんの後ろ姿を追いながら、店の裏のガレージに向かった。



まず初めに桜田さんが連れて行ってくれたのは、ショップがひしめき合う都内でも有名なショッピングモール。

「ここで好きな服を選べ」

「え?」

「デートの記念だ。プレゼントする」

驚きながら桜田さんを見つめれば、耳が赤く染まっていた。

「記念って、そんな……」

「おしゃれをしたお前の姿を俺が見たいだけだ。遠慮することない」

桜田さんは『俺がお前に魔法をかけてやる』とたしかに言った。けれど魔法にかかっているのは、きっと桜田さんの方だ。

そうでなければ『おしゃれをしたお前の姿を俺が見たいだけだ』なんていう甘い言葉を桜田さんが言うはずがないもの……。

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