助手席にピアス
まぶしい日差しを避けるためにサングラスをかけてハンドルを握る朔ちゃんは、間違いなくイケている。
相変わらず素敵な朔ちゃんの助手席に座っているなんて、夢みたい……。
熱に浮かされたように運転する朔ちゃんの横顔を見つめていると、、聞き慣れない言葉が耳に飛び込んできた。
「雛子ちゃん。しばらく会わない間に大人っぽくなったね」
「そ、そんなことないよ!」
これは社交辞令だとわかっていても、朔ちゃんに褒められるのはやはりうれしくて、口もとが勝手に緩んでしまう。
「いいや、綺麗になったよ。雛子ちゃんの姿を見たら、琥太郎は照れて目を逸らすだろうな」
再会してから数分しか経っていないに、次から次へと飛び出す朔ちゃんの褒め言葉にのぼせそう……。
でも、ここで、ふと疑問が生じる。
「ねえ、朔ちゃん? なんで琥太郎が照れるの?」
「ん? 雛子ちゃんは相変わらず鈍感だね」
朔ちゃんはおもしろそうに、クスクスと笑い出す。
なにがそんなに楽しいのか、私にはさっぱりわからなかった。
「朔ちゃんの意地悪っ!」
「ごめん、ごめん」
朔ちゃんは相変わらずクスクスと笑い続ける。その温かな笑顔につられるように、私も笑顔になってしまった。