助手席にピアス

嘘でしょ? ようやくここまでたどり着いたのに、まさかの門前払い!?

でも、ひとつも目的を果たさないまま回れ右!なんてできないよっ!

私は先週、朔ちゃんが遠慮することなく扉を開けたように、CLOSEのプレートを無視するとドアノブを掴んだ。でも、押しても、引いても、扉は開かない。

「もう!」

唇を尖らせ、頬を風船のように膨らませる。すると、背後から声が聞こえた。

「桜さんは、今日はもう閉店よ」

「え?」

思いがけない声にを聞き、驚きながら振り返ると、そこには日傘を差した年配の婦人の姿があった。

「そ、そうですか。親切にありがとうございます」

「どういたしまして」

上品な雰囲気を醸し出す白髪の年配の婦人は、にこやかに笑みを浮かべると私の前から姿を消した。

もしかして、定休日? でも私に声をかけてくれた年配の婦人は『今日“は“もう閉店よ』って言っていたよね……。

営業時間や定休日のお知らせがないか辺りを見回す。けれど残念ながら情報を得ることはできなかった。

仕方ない。また出直そう。

ガックリと肩を落とし、来た道をバス停に向かってトボトボ歩く。すると停留所にはガトー・桜の前で、私に声をかけてくれた年配の婦人の姿があった。

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