My sweet lover
『由梨ちゃん、引っ越したの?』


うっ、朝日さん。どうしてそれを…?


「あの、どうされましたか?」


恐る恐る尋ねてみれば。


『いや、あのね。今、由梨ちゃんのアパートの部屋の前にいるんだけど。
ガスと電気の申込用紙がドアノブにかけてあるものだから』


うそっ。


朝日さん、アパートに来たんだ…。


社長が“朝日はお前のアパートに突然来るぞ”って言っていたけど本当だった。


社長って結構鋭いんだな。


「あの…実は先週、引っ越したんです」


『えぇっ? じゃあ今はここに住んでないの?』


「はい…」


『今はどこに住んでるの?』


ど、どうしよう。


まさか社長の家に住んでいるだなんて、絶対に言えないし。


えーと、えーっと。


「あ、あの、同僚と一緒に住んでるんです。ルームシェアってやつです。
広い部屋に住めて、家賃も安くなるので」


うぉー、また嘘ついちゃったよー。

 
私ってば最近、朝日さんに嘘をついてばかりだ。


なんだか悲しくなってくる……。


『それならそうと、どうして何も言ってくれなかったの…?』


朝日さんの声がひどく沈んでいる。


こんなふうに、朝日さんを悲しませるつもりなんてなかったのに…。
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