嗤うケダモノ
「また明日ね、タニグ」
「ねー、ヒナ。
やっぱお泊まりはやめとく。」
日向のタニグチくんへの挨拶を遮った由仁は、少し強引に彼女の腰を抱き寄せた。
顔を赤くした日向が、慌てたように由仁とタニグチくんを交互に見る。
「ちょ…///
先輩! 離れて、離れて!」
「そーゆーのは、ご両親への挨拶が済んでからダヨネー?
だから、今日のトコロは…」
なんとか由仁の腕から逃れようと可愛いウサギがもがいているが、んなモン無視無視。
身を屈めてさらに距離を縮めた由仁は、日向の額にキスを落とした。
「よく眠れるオマジナイー☆」
「「…/////」」
真っ赤になって固まる日向。
真っ赤になった顔を隠すように背を向けたタニグチくん。
アンタ…
人前でなんてコトをしやがりマスカ。
「せせせ先輩?!
こんなトコでナニやって…//
あれ? 先輩?」
触れられた額を手で押さえる日向が見上げた由仁の顔には、いつもの微笑みはない。
妖しく煌めく黒い瞳は、走り去るタニグチくんを映していた。