嗤うケダモノ

首を傾げた由仁が言葉を言い終わる前に、タニグチくんが勢いよく頭を下げた。

ぅわぁ…

そーゆー直角型のお辞儀、確か昨日も見たような気が…


「本当に、スミマセンデシタ!
俺… なんであんなコト…
いや、でも、俺がやったンス!
スミマセンデシタ!
木崎さんにも…

木崎さんはこのコト‥‥‥」


先細りになる、つむじを見せたままのタニグチくんの声。

やっちまった自覚はあるものの 混乱しているようだ。

そりゃソーダヨネー。

『幽体離脱』なんて昔懐かしのザ・タッチのネタみたいなの、まさか自分がやっちゃうなんて考えもしないよネー。

親指で唇をなぞりながら、由仁は口角を上げた。


「『このコト』って、どのコトー?」


「は?
いや… 俺が…」


顔を上げたタニグチくんが、目を見張る。

腕を組んで柱にもたれた由仁は微笑んでいた。

穏やかに、微笑んでいた。


「ヒナの睡眠不足、解消したみたいだよー。
昨夜は久しぶりに爆睡できたンだって。」


「それは… 俺が…」

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