嗤うケダモノ

「さーすが部長サン。
カッケー。」


部長に顔を向けた由仁は、彼に柔らかく微笑みかけた。

途端に首まで赤くなった部長が 見るも無惨に狼狽えはじめる。

うん。
今の部長はカッコ悪い。


「ソコまでの覚悟があンなら、呪いなんて気にしない方向でイイと思うよー?
さーて、次は…
ヨコタ先輩の携帯って、どーなってンの?」


前半は部長に。
後半はヨコタさんに。

またもクルリとチェアを回した由仁が、ヨコタさんに向き直った。

さっきよりもずっと悲しげな彼女が、小さな声で答える。


「兄の携帯は…
行方不明なンです。
部屋に置いておいたはずなのに 葬儀でバタバタしてる間に気づけばなくなってて…

やっぱり久我先輩も、イタズラとか、イヤガラセとか…
そーゆーのだと、考えておられるンですね…」


「…」


「私も両親も、本当はわかってるンです。
早く解約するべきだって。
そうすれば、あんなメールで柔道部のみんなを混乱させるコトもないって。
でも…
でも…
もしも、もしも本当に兄からのメールだったら…
兄と繋がる最後の連絡手段かも知れないって思ったら…」

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