嗤うケダモノ

メールを打ち終えて。

かなり強引に、明日の放課後クレープデートの約束を取りつけて。

じゃ、私も部に戻るから、とヨコタさんは立ち上がった。

そんな彼女の様子を見た日向を またも違和感が襲う。

なんだろう…
大切なコトのような気がする。

扉を開けて出ていくヨコタさんを、手を振りながらも上の空で見送って…

背中を、見送って…


(あ…)


目を見開いた日向は、思わず口元を手で覆った。

そうだ、あの人はソファーから普通に立ち上がった。

歩く時は、片足を引きずっていたのに。
体重をかけると痛みが走るはずだから、あんなにスムーズに立ち上がれるワケないのに。

なのに普通に立ち上がった。

捻挫が治っていないハズのAくんは。

ナニソレ?
どーゆーコト?

治ってンだろ。
治ってないフリしてンだろ。

マラソン大会をサボりたいお子ちゃまデスカ。

いやいや、待て待て。
そんな理由じゃねェだろ。

消えた携帯。
呪いで治らないケガ。
実は治っているケガ…


(アイツだ…)

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