嗤うケダモノ

ヨコタさんを見つめる日向の瞳に、不安の色が広がっていく。
随分長い間黙り込んでいるコトを心配しているのだろう。

顔が冷静沈着なままだから、わかりづらいよ。

この不器用さんが。

今のキモチを伝えるには、きっと『ありがとう』は不的確。

じゃあ…
なんて言ってやろうか?


「ね、木崎さん。
日向って呼んでイイかな?」


日向の顔を覗き込んだヨコタさんは、楽しげに口角を上げながら言った。

驚いて少し身を引いた日向が、アーモンド型の目を瞬かせる。


「‥‥‥や、いいケド…」


「でさ、近いうちに一緒に遊ぼうよ。
私、日向と仲良くなりたいナ。」


「え… うん… うん?」


「イヤ?
おいしークレープ屋さん、二人で行かない?」


「い… イヤじゃないケド…」


うっすらと頬を染めて目を泳がせる日向を見つめながら、ヨコタさんは思う。

久我由仁め。
こんな可愛い生き物を一人占めしてやがったとは。

だが、これからはそうはさせない。

日向はもう、私の友達なンだから。

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