嗤うケダモノ


「撮れた、撮れたー。
どー? Aくん。」


「えと…
あの角のトコロがまだ一枚も…」


中庭を抜けた先。
プールの横。
この時期は特に、立ち寄る生徒も少ない柔道場。

その隣の、さらに誰も来そうにない用具入れで、由仁とAくんは頭を寄せあって画像フォルダをチェックしていた。

薄暗くて埃っぽいその倉庫は、マットやゴムチューブが入った段ボールやら、廃棄予定の畳やら、他の部の備品やらで溢れ返っている。

大会に向けての練習もいいケド まず掃除をしろ。


「あー、あの角ネー。」


「スンマセン。
俺はちょっと行けそうにないですケド…」


由仁が指摘された方向に目を向けると、Aくんは申し訳なさそうに頭を掻いた。

確かに、捻挫した足でその辺りまで行くには困難なほどの障害物が置かれている。


「イイよー。
俺が撮るからー。」


ヒラヒラと手を振った由仁がAくんに背を向け、障害物を越えて倉庫の角に近づく。

するとAくんは足音を忍ばせ、壁に大量に立て掛けられている畳の裏側に回り込んだ。

由仁に気取られぬよう。
素早く。

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