嗤うケダモノ

未だ震え続けるAくんの指が、液晶に触れる…

寸前、伸びてきた骨ばった手にヒョイと携帯が奪われた。


「ふーん?
コレが呪いの出所かー。」


糖度高めのセクシーボイス。
なのに、頭の悪そうな間延びした喋り方。
親指で唇を撫でる、煽情的な仕草。

Aくんの目の前に、由仁が立っていた。

『呪い』という名の悪意によって犠牲になったはずの由仁が、平然と立っていた。


「な… なんで…」


折り重なって倒れた畳と由仁を見比べながら、Aくんは茫然と呟いた。


「いやいや…
そりゃ、避けるでショー?
アソコの角に誘導された時に、位置的に襲ってくるのは畳だナーって、わかったもん。」


ヘタすりゃ死ぬしー、なんて、由仁は大袈裟に肩を竦める。

どーゆーコトだ?

畳が倒れてくるのがわかっていた?
ココで襲われるのがわかっていた?

襲ってくるのが『誰』であるかも、わかっていた?

そーゆーコトか?


「…
始めから疑ってたンスか、俺のコト。」


Aくんは低い声で唸った。

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