嗤うケダモノ

共犯者たちは埃っぽい用具入れの中で偽装工作を進めていく。

黙々と畳を起こしていたAくんは、日向と額を突き合わせて段ボールを漁っている由仁の背中に視線を向けた。


「久我先輩…
色々スンマセンデシタ。」


「んー?
そんなコト言っても、手伝わないヨー?
俺、力仕事キラーい。」


振り返りもせずに彼が答える。

全く… 誰だよ。
この男が『ペガサス』だなんて言い出したバカは。

草食動物や愛玩動物なんて、とんだ見当違い。

彼は強い男だ。
鋭い牙を隠し持った、勝手気ままに生きるケダモノだ。

ナニモノにも囚われず。
ナニモノにも縛られず。

どこまでも自由に…


「俺… 好きですよ、柔道。
柔道部のみんなも。」


目の錯覚か、随分と広く見える背中にAくんは語りかける。


「だから…
周囲の目なんか気にせず、好きなようにしようと思います。」


やっぱり由仁は、興味なさげに ふーん、と生返事をするダケ。

けれど日向は、段ボールの中身に視線を落としたまま頬を緩めた。

『罵倒→改心』なんてルートも あったみたい。

< 241 / 498 >

この作品をシェア

pagetop