嗤うケダモノ
伍
「おっかしーなー…
オジーチャン、ドコ行ったンだろ?」
由仁のバイクが置いてある駐輪場に向かいながら、日向は軽く首を傾げた。
諸々の作業を終えてAくんと別れ、由仁と日向が戻ってみると…
西陽を浴びたオカ研部室は静まり返っていた。
声を掛けてみた。
ソファーの下も覗いてみた。
やっぱり、さっき風のように現れた空狐は消えていた。
「放っときゃイイよー。
あの人、自由人だし。」
隣を歩く由仁が、片手で肩を揉みながら言う。
「どーせ、ドッカでコッソリ見てンじゃねーカナ?
俺のするコトに、なんだか随分興味あるみたいだから。」
「?」
由仁の言葉の意味も、その妖しい微笑みの訳も、日向にはわからない。
とりあえず、わかるのはコレだけ。
空狐に忠告されたにも関わらず…
「あのー… スミマセンデシタ。
なんつーか…
変なタイミングで、変な乱入しちゃって…」
ボソボソと呟いた日向は、前髪を直すフリをして赤くなった顔を隠した。