嗤うケダモノ


「おっかしーなー…
オジーチャン、ドコ行ったンだろ?」


由仁のバイクが置いてある駐輪場に向かいながら、日向は軽く首を傾げた。

諸々の作業を終えてAくんと別れ、由仁と日向が戻ってみると…

西陽を浴びたオカ研部室は静まり返っていた。

声を掛けてみた。
ソファーの下も覗いてみた。

やっぱり、さっき風のように現れた空狐は消えていた。


「放っときゃイイよー。
あの人、自由人だし。」


隣を歩く由仁が、片手で肩を揉みながら言う。


「どーせ、ドッカでコッソリ見てンじゃねーカナ?
俺のするコトに、なんだか随分興味あるみたいだから。」


「?」


由仁の言葉の意味も、その妖しい微笑みの訳も、日向にはわからない。

とりあえず、わかるのはコレだけ。

空狐に忠告されたにも関わらず…


「あのー… スミマセンデシタ。
なんつーか…
変なタイミングで、変な乱入しちゃって…」


ボソボソと呟いた日向は、前髪を直すフリをして赤くなった顔を隠した。

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