嗤うケダモノ

しかし、時既に遅し。

身を翻そうとした日向の腕が、由仁にガッチリ掴まれた。


「嬉しーナー。
ヒナがそんなふうに思ってくれてたなんて。
今日は、俺ンちに寄って帰ろーネー?」


「え…
まままさか…」


ソレはアレか?
とうとう猛獣の檻に投入されるエサになっちまうのか?!

待って、ちょっと待って。
色々と心の準備ってモノが…

駐輪場に向かって引きずられながら、日向が焦った声を張り上げる。


「ちょ…
勘違いしねーでクダサイっ
嘘だから! 嘘ですからネ?!」


「えー? 嘘なのー?
じゃ、そんな口は急いで塞がなきゃ。
やっぱ俺ンち直行ー☆」


退路を絶たれた─────??!!

言葉を失って硬直する日向に、ヒョイとヘルメットを被せて。
さらにヒョイと持ち上げて、リアシートに乗っけて。

由仁は妖艶に微笑む。


「だいじょぶ、だいじょぶ。
まだ、ヒナが嫌がるよーなコトはしねェから。

たぶん、ネ。」




『まだ』ってナンダ。
『たぶん』ってナンナンダ。

< 245 / 498 >

この作品をシェア

pagetop