嗤うケダモノ


そして翌日。

朝一番に久我家まで押しかけて。
寝ボケ眼の由仁から鍵を受け取って。

学校に急行し、用具入れを開けた部長とヨコタさんが目にしたモノは…

狭いスペースいっぱいに掲げられた、柔道部が試合の時に使用する『不撓不屈』と書かれた赤い横断幕だったという。

その下には、紛失していたはずのヨコタ先輩の携帯が置かれていたという。

開いてみると、未送信のメッセージが残っていて…


「呪いなんて、嘘だって!
みんなの結束力と強靭な精神を確認したかったンだって!
試すような真似して悪かったってさ!
ほんと、いい迷惑だっての!

でもね? お兄ちゃんね?
ずっと見てるって!
いつまでも遠くで応援してるって、書いてあったの!!」


登校した日向を取っ捕まえて、ヨコタさんは興奮ぎみに捲し立てた。

部長ったら男泣きしちゃって、大変だったンだよー、なんて笑う彼女の目だって赤い。

日向は知っている。

ソレが真実ではないコトを。

儚く、けれど限りなく優しい虚構であるコトを。

それでも、笑った。

ヨコタさんの笑顔が、キラキラと輝いていたから。

この笑顔のためなら、虚構だろうが嘘だろうが、なんだってイイと心から思えたから。

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