嗤うケダモノ
「嫌いってか、ジャマです。
入口塞がないでくださいよ。」
「立てなーい。
ヒナがいないと力が出ないヨー。」
顔が濡れたアンパンみてぇなコト言ってんじゃねェよ。
見事な駄々っコぶりに眉を顰めながらも、タニグチくんは段ボールを足元に置く。
伸ばされた両手を掴んで引っ張ると、由仁はやっと立ち上がった。
「先輩、余裕なさげっスね。
女慣れしてそうなのに。」
呆れ顔のタニグチくんが溜め息混じりにボヤく。
そんな彼を流し目ぎみに一瞥した由仁は、睫毛を伏せてもっと深い溜め息を吐いてから…
「余裕なんてあるワケねェよ。
てか、余裕シャクシャクで恋してるヤローなんていねェよ。」
悩ましげに呟いた。
なんつーか…
本来の色気と気怠い雰囲気の上に憂いまでもが加算されて、ますますエロいよ?
だだ漏れ通り越して、フェロモン垂れ流しだよ?
もうちょい自重しろ。
全身猥褻物の極みから目を逸らして顔を見合わせたタニグチくんとヨコタさんは…
二人してニヤリと笑った。
うん。
君らの笑みは黒すぎるよ?
それはそれで自重しろ。