嗤うケダモノ

「AED取ってくるわ。」


苦笑混じりに言って立ち上がった百合も、樹と入れ違うように部室を出て走っていく。

そんな二人を不思議そうに見ていた空狐の袖を、満面に焦燥を浮かべた由仁が引っ張った。


「早くヒナのトコ行かせて。
早く殺っちゃって。
なるべく痛くない方法で。」


「注文の多いヤツじゃの…」


眉根を寄せた空狐が、ドコからか取り出した杖で日向の抱く小さな箱をトンっと突く。
それから、そのまま杖の先端を由仁の胸に向け、さっきと同様 無造作にトンっと突いた。

ただソレだけ。

だが、声もなく崩れ落ちる由仁の身体。

素早く腕を伸ばして由仁を抱きとめた樹は、彼を床に寝かせながら脈を確かめた。


「死んだな。」


冷静すぎマス、樹サン。


「儂やこんな由仁を見ても、あまり驚かぬのじゃな。
おぬしも、先程のおなごも。」


空狐が訝しげに声をかけると、腕時計を見ていた樹の唇が薄く綻んだ。


「俺も百合も、ジンの突拍子もない行動と、その尻拭いには慣れている。」




なんつーか… 苦労人だネー…

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