嗤うケダモノ

うん、カワイイね。
いつもの笑顔だね。

お悩みオーラは払拭された。
かと言って、やっぱ色気は皆無だケドさ。


「…うふふ。
よかった。」


目元を和ませた百合が、意味ありげな含み笑いを漏らす。

そして、ソファーに転がったままの秘密箱に視線を落とし、眉根を寄せた。


「ね、コレ、ヤバいモノ?
ナニが入ってンの?」


「あ… コレは…」


答えようとして、日向は言葉を詰まらせる。

ヤバいモノ。
確かにそうだ。

男を殺して、自らも命を断った女の怨念の結晶なのだから。
幾人もの恋に悩む女のコを引きずり込み、巻き添えにしてきたのだから。

だが、もう壊れた。

本人が意図したわけではないが 由仁が日向を捜すついでに因果を断ち切った。

女が最期に見せた優しく儚い笑顔を思い出す。

今、この中に残っているモノは…


「守られることのなかった、悲しい約束が入ってました。」


日向は箱を拾い上げ、ギュっと抱きしめた。

来世があるのならと、願わずにはいられなかった。

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