嗤うケダモノ
「ほんと、ほんと。
近場とはいえ、海の見えるリゾートホテルに一泊二日ペアでご招待。
センセー、太っ腹だヨネー。」
跳ねた毛先を指でクルクル弄びながら、悪戯そうに由仁が笑った。
身体を斜めにして頬杖をついたその姿。
気怠いネ。
しどけないネ。
クっソ暑い夏でも、その色気は衰えを見せマセンネー。
首をブンブン振って由仁のセクシービームを払った日向は、涼しい顔でポテトを齧る樹を見た。
「イイですね。
吉岡先輩と一緒に?」
「当然だ。」
「新しい水着、買っちゃおっカナ。」
軽く頷いて目元を和ませる樹と視線を交わして、百合も笑う。
不純異性交遊とか言わないで。
コイツら、既に夫婦もどきだから。
微笑ましいカンジだから。
二人の笑顔につられて、日向も唇を綻ばせた。
が、納得いかない男が一人…
「なんでヒナが、そんな幸せそーに笑ってンのー?
てか、なんで樹で決まり、みたいな話になってンのー?」
頬杖をついたままの由仁が、不服そうに眉を顰めた。