嗤うケダモノ
その、無駄に口元に触れる癖、やめてイタダキタイ。
指先が淫靡に見えて仕方ない。
薄く開いた唇が煽情的に見えて仕方ない。
出来れば詰襟のホックまでガッチリ留めて胸元を隠してイタダキタイし、さらに言えばホッケーマスクなんて被ってイタダキタイくらいなンですよ、コラ。
遠くから見ていて漠然と思っていたコトが、日向の中で確信に変わる。
初めて逢ったあの夜よりも、彼は確実にエロ味を増していた。
全く…
時の流れってヤツは恐ろしい。
少しでも気を抜くと、彼の色香に心どころか全身を溶かされ、スライム化してしまいそう。
だけど…
(今は、こんな全身猥褻物に誑かされて、腑抜けになってる場合じゃないンだから!)
再びピンと背筋を伸ばした日向は、睨むような眼差しで考え込んでいる様子の由仁を見た。
視線に気づいて顔を上げた由仁が、首を傾げながら問う。
「ヒナはなんともないンだよね?
もう一人のコは?」
「私は普段通りです。
アキからも、特に連絡はありません。」
「ふぅん…」
軽く頷いた由仁は、チェアに座ったままキャスターで滑りながら移動した。
デスクの引き出しから年季物の黄ばんだ半紙と筆ペンを取り出し、日向にはとても読めない文字をサラサラと書いていく。