嗤うケダモノ
戦慄を感じながらも目を逸らせなくなった日向に気づかず、由仁は口を開いた。
「今34で当時高校一年ってコトは、ソレ、18年前の話ー?」
…
コワかろーが彫像だろーが、その頭の悪そーな口調は変わりマセンカ。
ソーデスカ。
「まぁ… 数えたことはありませんケド、そうなりますねェ。」
「ふーん?
…
俺、千鶴子って人に似てるー?」
「え… えぇっ?!」
話をしている間、恍惚と由仁を見つめていた年配の仲居は、夢から覚めたような様子で首と両手をブンブン振り回した。
「いえいえ! とんでもない!
千鶴子ちゃんは… その…
もっと健康的な雰囲気の女性だったというか…
…
あら… でも…」
なるほど。
千鶴子サンは全身猥褻物ではなかった、と。
相手がお客だから、言い回しに苦労するネー。
で? 『でも』ナニ?
仲居はさっきとは全く違う眼差しで、もう一度由仁をマジマジと見つめた。
「そう言えば…
面差しはよく似ていらっしゃいますね。
その目尻のホクロ…
確か千鶴子ちゃんにも同じ場所に…」