嗤うケダモノ
(なんつー救われねェ話だ…)
日向はイライラモヤモヤしながら、それでも黙って仲居の長話を聞いていた。
別に、誰も悪いワケじゃない。
清司郎は千鶴子に。
瑞穂は清司郎に。
千鶴子は… 他のダレかに。
ただ、恋をしただけだ。
なのに、如何ともし難いこの結末。
(せめて千鶴子って人ダケでも、幸せになってればいいケド…)
ふ、と溜め息を吐いた日向は、隣に立つ由仁をチラリと見上げた。
きっと、もうとっくに飽きてンだろな。
『めんどくさーい』とか思ってンだろな。
そもそもなんの気紛れで、こんな恋バナ聞こうとしたンだろ。
基本、他人に興味なさゲな人なのに。
だが日向の目に映った由仁は…
つまらなそうに髪を弄っていたりはしなかった。
かといって、興味を示して目を輝かせていたりもしなかった。
軽く結ばれた薄い唇。
なんの感情も浮かんでいない、硬い頬。
そして、光の失せた瞳…
完全に無表情。
まるで彫像のよう。
ナニ?
こんなの見たコトない。
こんなのは知らない。
綺麗だ… でも…
コワい…