嗤うケダモノ

「先輩、ドコ行くンスか?」


聞かなくてもわかるような気もするが…
一応日向は、手を引いて前を歩く由仁に声をかけた。


「んー?
そりゃ、座敷牢でショー。」




やっぱりか。

この方向、明らかにそーだもんネ。

忙しそうに動き回る仲居サンSの目を盗んで、二人は母屋の裏庭を目指していた。

まだ日も昇りきってないのに、みんなガッツリ働いてンな。

旅館の仕事って重労働なンだな。


「先輩…
コレ、行くなら夜中とかが良かったンじゃないっスか?」


山菜の入ったカゴを持った板前サンが通りすぎるのを、柱の陰で身を潜めて待ちながら、日向はそっと囁いた。


「ダメ、ダメー。
謎の光が出現しちゃうでショ?」


「へ?
どーゆーコトっスか?」


「入れないハズの場所で、夜中に懐中電灯持ってコソコソしてるから、みんなが怪奇現象だなんて勘違いしちゃうンだよ。
あ、もーだいじょーぶー。」


辺りに人がいなくなったのを確認した由仁は、日向に微笑みかけてから再び歩きだした。

目の前にはもう、夾竹桃の花畑。

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