嗤うケダモノ


今日の夕暮れは薄紅色。

神秘的で、幻惑的。
ダレカさんによく似合う。

だが、自然の美しさを噛みしめる余裕は、今の日向にはナイ。


「コレ… 家?」


目の前に広がる空ではない景色に圧倒されて、日向は茫然と立ち尽くした。

巨大な正門の隣にある通用門を潜ったら…

ハイ、キタコレ、お屋敷。
旅館と見紛うばかりのドデカい純日本家屋。

ナンダコリャ?

狭い土地に三階建てが主流の、都会の住宅事情にケンカ売ってンの?


「先輩…
ボッチャンだったンスか…?」


石灯籠の横に無造作にバイクを停める由仁の袖を、埴輪顔の日向が引っ張った。


「ボッチャン言うな。」


苦笑した由仁が、袖を掴む日向の手をさりげなく握る。

お屋敷効果で、警戒心もブっ飛んでマスネ。

しめしめ。


「親が祓い屋やってて、荒稼ぎしてンの。
ほとんどイカサマだケドネー。
コッチ、おいで。」


茫然自失の日向に拒否されないのをイイコトに指を絡めて手を繋いだ由仁は、満足そうに微笑みながら彼女を玄関に誘った。

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