嗤うケダモノ

千鶴子のシャツは、瑠璃子が企んだ通りの効果をもたらした。

最初にシャツを発見した後藤の妻は狂った。

力任せにシャツを引き裂きながら喚き散らす妻を見て、後藤は正常な判断力を失くした。

そして、首を吊った。

千鶴子を埋めた場所に立つ木に縄をかけて。

贖罪のつもり?
笑わせないでよ。

そんなコトで復讐は終わらない。

まだ残っているもの。

大罪人である、孝司郎が。

だが、簡単にはいかないだろう。

後藤や彼の妻とは違い、孝司郎は化け狐のコトを知らない。
自分が呪われているコトを知らないのだ。

つまり、後藤の時と同じように『幽霊見たヨ☆』なんて言ったトコロで、ちょっと怯える程度だろう。

自殺に追い込まれるほど、恐怖を煽ることが出来るとは思えない。

じゃあ、どうする?

後藤の妻のおかげで流れた『狐に呪われてる』という噂も、一笑に付されたし。
今さら警察に駆け込んでも、イイトコ中途半端な有期刑にしかならないだろうし。

どうする?

あぁ、イイ考えが浮かばない。
協力者でもいればいいのに。

協力者‥‥‥

あれ?
いるよネ、協力者。

ナニやってンの?18年間も。
ナンデ来ないの?

千鶴子に復讐を託されたという、化け狐は。

< 437 / 498 >

この作品をシェア

pagetop